朗読会を開催する方法

 ここでいう「朗読会」とは、1050代の虐待サバイバー100名が書いた本『日本一醜い親への手紙そんな親なら捨てちゃえば?』Create Media編/dZERO刊)を参加者たちが朗読するコーナーを設けた児童虐待防止に関するイベントのことです。

 その朗読のコーナーに、実際に親から虐待された当事者(=虐待サバイバー)を招こうというのが、「親への手紙★公認朗読者」(以下、公認朗読者)プロジェクトです。


 たとえば、虐待サバイバーである公認朗読者に自分の書いた「親への手紙」と前述の本から選んだ数本を朗読してもらって30分間。

 その後、公認朗読者にイベント参加者が質問し、「子ども虐待とは何か」を具体的かつリアルに学んでいく30分間を設け、さらに1時間ほど「今の自分が子ども虐待を防止するためにできること」を参加者各自に考えてもらい、発表する。
 こうすると、2時間のイベントが成立します。

 従来の児童虐待防止イベントは、児童相談所の職員や臨床心理士、精神科医や弁護士などが一方的に話すだけで、帰り際には聴衆が話の半分も覚えてないことが多すぎました。


 しかし、公認朗読者を招いた朗読コーナーを設けるイベントなら、実体験を聞かされるため、参加者の多くの心に虐待の深刻さが刻み込まれ、目を背けてはいられない現実が記憶されるため、本業やCSR、ボランティアを通じて虐待問題の解決に自分事として取り組む人を増やしていけます。


 「公認朗読者」プロジェクトを立ち上げた今一生がここ数年、全国各地で30回ほど講演した際も、虐待サバイバーによる朗読コーナーを講演の前に設けたところ、それを聞いたイベント参加者たちの心に響いたことが、アンケートでわかりました。


 実際、そうした参加者の中から「公認朗読者」に応募してきた人が多く、「自分と同じつらい思いは今の子どもたちにさせたくない」「子ども虐待防止のために何か自分にできることはないか?」と考え、動き始める人が増えつつあります。


 学校の先生なら、体育館や講堂、教室でこの本を生徒が1人ずつ読み上げていくことで、今まさに親から虐待されている子どもに自覚を促すことができます。
 それは、その子どもが虐待死や一家心中、精神病や自殺へ導かれるのを未然に防ぎ、早めに児童相談所へ保護できるチャンスを作り出すことでもあります。

 企業なら、CSR活動として有志の社員を集め、この本を社内で朗読する機会を作れば、社員たちが彼らの子どもに虐待していることを自覚させたり、夫婦間のDVにも気づかせ、私生活のトラブルによって業務に支障が出るのを未然に防ぐこともできるでしょう。

 本業でも、虐待問題を解決する新たな商品・サービスを生み出せるかもしれません。

 他にも、弁護士会の人権集会、養護教諭の研修会、児童福祉を学ぶ授業、子ども食堂の集まり、宗教団体の勉強会、青年会議所の社会貢献活動などで、この本を朗読するチャンスを作れば、虐待の深刻すぎる現実や4タイプに収まらない虐待のバリエーションを学び合えます。


 いずれにせよ、子どもを痛めつけるという深刻な虐待の問題を解決するには、親から虐待されることがどれだけ苦しいものなのかについて、知識を得る以上に気持ちで受け止め、「このまま何もせずに見過ごしてしまってはいけない」と奮起できるチャンスを増やすことが必要不可欠です。

 そのチャンスのためにイベントを開催することは、誰にでもできること。
 あなたが虐待サバイバーの価値を理解し、「公認朗読者」を招くことで、彼らは本物の「公認」の朗読者になれるのです。

●イベント開催の未経験者のための運営マニュアル

 既に、企業や学校、寺の檀家などの団体に属しているなら、イベント企画の担当者に「子ども虐待防止のための朗読会を開催してほしい」と申し出れば、検討してくれるでしょう。
 企業ならCSR担当者か広報部、学校なら教頭や体育館・図書館担当の教職員、暖かな寺の住職などに趣旨や日時、会場などを提案すれば、年間予算の範囲で進めてもらえます。

 ここでは、そうした団体に所属しておらず、朗読会の開催ノウハウについて知らない方向けにイベント運営の方法をお知らせします。

A:市役所の関連部署に「公認朗読者」を推薦する

 市役所のホームページには検索窓があり、「児童虐待」「イベント」の2語で検索すると、過去の児童虐待関連イベントが見つかります。
 そのイベントを管轄している役所内の部署や、協賛している企業の連絡先などがわかりますので、そうした窓口へメールで「虐待サバイバーの市民である公認朗読者をイベントに招いてください」と知らせましょう。
 メールに以下のリンクも伝えておくと、今後のイベントに公認朗読者が招かれ、親から虐待されてきた当事者の思いを聞くことができます。
https://roudoku-100letters.blogspot.com/

B:イベントを開催した団体へ「公認朗読者」を推薦する

 民間でも、さまざまな児童虐待防止イベントが開催されています。
 これは、Googleで「児童虐待」「イベント」「主催」の3語で検索するとたくさん出てきます。
 その作業をすることで、イベントの主催者の連絡先を探し出せますので、メールで「虐待サバイバーの市民である公認朗読者をイベントに招いてください」と知らせましょう。
 メールに以下のリンクも伝えておくと、今後のイベントに公認朗読者が招かれ、親から虐待されてきた当事者の思いを聞くことができます。
https://roudoku-100letters.blogspot.com/

 たとえば、次のような団体がすぐ見つかります。

●資生堂社会副事業財団
 http://www.zaidan.shiseido.co.jp/activity/parents/seminar.html#child_abuse
人権問題研究協議会
 https://www.humanrights-ra.com/wp-content/uploads/2019_03_001.jpg
石井食品  https://myfuna.net/archives/townnews/%E7%9F%B3%E4%BA%95%E9%A3%9F%E5%93%81viridian%E3%81%A7%E3%80%8C%E3%82%AA%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%AA%E3%83%9C%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%88%E3%80%8D%E3%80%81%E5%85%90
全国福祉未来ネットワーク
 https://eventon.jp/13415

C:自分で開催する

 個人でも、10~50人を集める小規模の朗読会なら開催できます。
 子ども虐待防止について関心を持ちそうな仲間数人に声をかけ、以下の順序で開催してみましょう。

① イベントの運営メンバーを友人やネット市民に呼びかける(3人以上を目標に)
② 会場の候補リストを作り、開催日時を決定(会場例:公民館・学校・寺・カフェなど)
③ 公認朗読者に出演を依頼広報チラシや会場費を含めた総経費を3万円以内に抑える)
④ 参加費の額面を設定するか、企業にスポンサーを依頼(クラウドファンディングも有)
⑤ イベント情報をブログで発表し、SNSで拡散させる(twitterなら #親への手紙 を活用)
 地元メディアにイベントを告知し、事前取材をとりつける

 たとえば、地元のカフェを2時間だけ「貸し切り」で予約します。
 その際、1人2杯ほどのドリンク代に相当する1000円と、参加費1000円を上乗せすると、1人当たりの参加費は2000円。
 その半分は店に払うので、1人1000円の売り上げとして20人も集めれば、2万円。

 2万円なら、1万円をチラシ印刷代に回し、残った1万円を「公認朗読者」の謝礼・交通費に充当させることができます。
(※チラシを印刷せず、facebookやtwitterなどSNSだけで公募すれば、1500円の入場料で20人を集めればトントンになります)

 このように、チラシ印刷費+会場使用料+公認朗読者への謝礼などのコストを計算しておくと、そのコストをどう賄うかだけが課題になります。

 実際には、運営メンバー間の打ち合わせ交通費や飲食費などもかかるので、3~5万円の予算を見ておけば、地元の企業がスポンサーになってくれることもあれば、ネット上から1000円単位の寄付を集めてもいいでしょう。
(※2018年の今一生の虐待防止講演会は、各地の一般市民が銀行口座を公表し、1回開催で15万円ほどの経費をネット上から寄付してもらい、7か所で参加費0円を実現しました)

 すでに30~50人を集める定期的なイベントをやっているなら、児童虐待防止をテーマにイベントを企画し、子どもでも参加できるように年齢別に500円・1000円・1500円・2000円の入場料を設定し、「公認朗読者」に出演を依頼してください。

 企画する前には、なるだけ運営メンバー間で『日本一醜い親への手紙』を読み、虐待サバイバーが必死に生き延びてきた価値を理解していただけると、ありがたいです。